香美市香北町

【香長】香美市香北町で町おこしのため、わずかなチームで始まった小学生のバレーボール大会「アンパンマンカップ」が10年余りで、中四国から選手だけで2500人が参加する規模に成長し、県中東部の地域振興にも一役買っている。 今年も8、9の両日に高知市など7市町村を会場に、過去最高の220チームが熱戦を繰り広げた。(野村 圭)

 「1本カット」「決めていけ!」「前へー!」
  選手を励ます手拍子や声援。9日夕、香南市野市町の県立青少年センターで行われた女子の部決勝。
 ピーッ。一瞬の静寂の後、試合終了のホイッスル。両チームの選手とも涙をこらえきれない。どちらも譲らず、点を取り合った接戦。観客席から優しい拍手が響いた。

会場7市町村

 同カップは今年12回目。本県の46チームを含め、中四国や近畿地方の10府県から多数が参加した。会場は、高知市高須から安芸郡安田町までの7市町村にある学校の体育館など18カ所。宿泊は周辺のホテルや旅館など30カ所に及ぶ。
 主催は、香美市の香北バレーボールクラブOBや県内の指導者らでつくる同大会実行委。同クラブ監督の五百蔵隆さん(53)が実行委員長を務める。

12回目10府県220チームに

もともと、香北町は小学生チームが全国大会に出場を重ね、ママさんバレーも盛んな土地柄。町おこしにつなげようと、1997年に女子10チームで大会を始めた。

2000年にはアンパンマンミュージアム復興財団が協賛。同カップとして、約25チームで新たなスタートを切った。
年々参加チームが増え続け、第10回から男子の部を設けたことで30チームほど増加。第11回には200チームを超えた。「大会の規模は日本一では」と五百蔵さんは言う。保護者らを含めれば、今年の大会は4千人近い参加者になる。

格安で宿舎手配

 誘致活動は特にしておらず、「体罰をしているチームは参加させない」という理念の下、紹介状がなければ加われない仕組み。そのことが信頼と共感を生んでいるほか、正月明けの大会が少なく、「6年生最後の思い出づくりにしたい」「中学の新人戦に向けて腕を試したい」という潜在的な思いに合致したとみられている。また格安で宿泊の手配など、地元の幅広いバックアップも大きい。

 「アンパンマンと聞き、全員一致で参加を決めた」というのは、初参加者の岡山県の監督。優勝、準優勝すると、アンパンマンの顔をあしらったメダルが贈られる。プログラムは、同ミュージアムの無料券付きだ。


地産地消の弁当

2年前から開会式には地元キャラクターの着ぐるみが登場して盛り上げ。香北町の韮生米、地鶏やカツオ、県野菜を用いた地産地消の弁当も用意されている。
  アンパンマンのお面をかぶった道案内など、子どもたちの思い出づくりになる工夫も多い。県外から手伝いに駆け付ける審判員もおり、大会を支えるスタッフは100人を超える。「高知のバレーボールを盛り上げ、レベルを上げたい。子どもが喜んでくれたら、準備の苦労も楽しくなる」と五百蔵さん。

試合で涙を流した選手たちも、表彰式では胸のメダルに笑顔を見せた。「県外に友達もできたし、中学でも続ける」「もっとレシーブを拾えるように」「来年は決勝まで残りたい」。小さな輪から始まった大会。規模の成長とともに、交流を楽しみ、新たな目標を見つける子供たちの笑顔も増えている。